空間デザイナーは、オフィスや商業施設、イベント会場などさまざまな施設における快適な空間を生み出しています。そしてライブハウスもまた、空間デザインによってさまざまな工夫がなされていることをご存じでしょうか。本記事では、ライブハウスの空間デザインのポイントや、実際のデザイン例を詳しく解説します。
ライブハウスの空間デザインのポイント
ライブハウスの内装と外観をデザインする際には、単なる見た目の美しさだけでなく、音響や防音、振動対策など、機能性と快適性を兼ね備えた空間づくりが重要となります。
コンセプトの決定
快適な空間デザインのためには、コンセプトの明確化が欠かせません。
店舗の核となるコンセプトを明確にすることで、内装や外観の方向性だけでなく、提供するサービスや集客戦略にも一貫性が生まれます。これは、競合との差別化にもつながります。
防音対策
さらに、防音対策はライブハウスにとって必須事項です。騒音による近隣トラブルを未然に防ぎ、地域との良好な関係を築くためには、しっかりとした防音工事が求められます。ただし、防音工事にはコストがかかるうえ、定期的なメンテナンスも必要です。
同様に、音の振動が建物に伝わることで生じるクレームを避けるためには、防振ゴムや専用の防振床の導入も検討すべきです。とくに縦ノリなど身体的な動きが多いライブハウスでは、振動対策はより一層重要となります。
内装材の選定
音響環境を整えるためには、内装材の選定にも注意が必要です。ウレタン系の吸音材やグラスウールの防音ボードなど、音質の調整に適した素材を使用することで、演奏や会話のクオリティが向上します。
加えて、照明器具も空間演出に大きく影響を与える要素のひとつです。内外装の雰囲気に合わせたデザイン性の高い照明を選ぶことで、視覚的な印象を強め、集客力や売上アップにもつながります。
多目的に活用できる空間にする
ライブハウスはライブのみならず、ダンスイベント、レコーディング、リハーサルなど、多目的に活用できる空間として設計することが望ましいです。用途に応じて必要となる床面積や設備が異なるため、柔軟なレイアウトと多機能な内装材を取り入れることがポイントです。
ただし、用途地域の規制が存在するため、事前に法的条件を確認しておくことも大切です。
具体的な施工事例を紹介
ライブハウスの内装と外観は、施設のコンセプトや利用目的に応じて大きく異なります。そこで、実際に運営されているライブハウスのデザイン事例を2つ取り上げ、それぞれの特徴的なデザインを紹介します。
META VALLEY
「META VALLEY」は大阪・難波にオープン予定のライブハウスで「空き工場跡地の中に“村”を作る」というユニークなコンセプトが採用されています。グレーを基調とした外壁に、ピンクやイエローのロゴを配置したスタイリッシュな外観が特徴です。
内装・設備は多目的に設計されており、音楽ライブはもちろん、展示会や配信イベント、eスポーツにも対応可能です。飲食スペースやアートスペースも併設。収容人数は600人と大規模です。
CLUB ROSSO
「CLUB ROSSO」は、渋谷に位置するライブハウスです。音楽イベントのみならず、トークイベントや展示など音楽以外の催しにも対応できる柔軟な内装が魅力です。
スタンディングでは最大200名、座席はチェアで80席、テーブルで60席まで対応でき、イベントの内容に応じてレイアウト変更ができます。
まとめ
ライブハウスの空間デザインにおいては、視覚的な美しさだけでなく、音響、振動、防音といった機能面を兼ね備えた空間づくりが重要です。明確なコンセプトを設けることで、内装・外観・サービスのすべてに統一感が生まれ、競合との差別化にもつながります。また、防音・防振対策や音質を高める内装材の選定、照明演出などを通じて、快適で魅力的なライブ体験を提供できます。多目的に使える柔軟な設計も求められ、法的な用途制限にも留意が必要です。実際の施工事例として、「META VALLEY」はスタイリッシュかつ多機能な大規模空間を、「CLUB ROSSO」は用途に応じた柔軟なレイアウトを実現しており、いずれも空間デザインの好例といえるでしょう。