空間デザイン業務のひとつに「商空間デザイン」があります。空間デザイナーを目指している人は、商空間デザインの知識をつけることで、新しいデザインの引き出しをつくれるかもしれません。そこで本記事では、商空間デザインの概要や効果、実際のデザインの流れをまとめて解説します。ぜひ参考にしてください。
商空間デザインの概要と効果
商空間デザインは、店舗やオフィス、ショールームなど、商業目的で使用される空間を機能的かつ魅力的にデザインする専門分野です。商空間デザインでは、利用者の行動や心理、ブランドイメージを考慮しながら売上や顧客満足度の向上を目指します。そのため、内装や外装、照明、家具、サイン計画といった空間の構成要素を総合的に計画するのです。
商空間デザインの効果
適切な商空間デザインは、顧客の行動や感情に働きかけます。そして、売上の向上や顧客満足度の改善、ブランド価値の向上などビジネスに直接的な影響をもたらすのです。
とくに現代では、多様な顧客ニーズに対応する柔軟性が求められやすくなっています。そのため、可動式の壁や家具を活用した空間の変更が重要視されています。
革新的な店舗運営モデルとして、無人店舗の設計や実店舗とオンラインショップを融合させたオムニチャネル戦略の支援、複数ブランドによるスペースシェア型のポップアップストアなどが増加しています。
また、テラス席の活用は顧客に開放感や自然とのつながりを提供して特別な体験をもたらし、新規顧客の獲得につながりやすいです。さらに、店舗内に余白を設けることで顧客の滞在時間を延ばし、購買意欲を高める効果が期待されます。このような空間設計は、価値ある体験を提供し、顧客ロイヤリティの向上や口コミによる集客効果ももたらすでしょう。
商空間デザインの流れを紹介
店舗や商空間の企画・デザインは、ビジネスの成功に直結する重要なプロセスです。その流れを、順番に見ていきましょう。
ミーティング
まず、ミーティングを通じてクライアントの要望やビジネス目標を理解し、ターゲット顧客層や商品・サービスの特性を分析します。これにもとづき、店舗のコンセプトを明確化するのです。そして、レイアウトや動線計画、色彩計画、照明計画といった要素を創造的に設計します。
設計
デザインの基本設計では、空間の大まかな構成や主要仕様を決定します。そして、実施設計ではさらに詳細な図面や仕様書を作成するのです。この際、法規制への適合性や構造的な実現可能性も確認されます。
デザイン監修
デザイン監修は、設計から施工、完成に至るまでのプロセスを管理する段階です。施工図のチェックや材料・設備機器の承認、現場での施工状況の確認を行います。そして、初期のデザインコンセプトを正確に実現可能にします。
家具・什器のデザイン
家具や什器のデザインも重要な要素です。店舗全体のコンセプトと調和させつつ、ディスプレイや顧客の動きやすさ、従業員の作業効率を考慮した設計が求められます。耐久性やメンテナンスのしやすさ、環境への配慮も大切です。
サインデザイン
さらに、サインデザインでは視認性と可読性を確保し、店舗全体のデザインコンセプトとの調和を図ります。多言語対応やピクトグラムの使用、デジタルサイネージの導入なども検討されます。
BIMデータの活用
完成後には、BIM(Building Information Modeling)データを活用します。そうすることで、将来の改装計画に大いに貢献します。
まとめ
商空間デザインは、店舗やオフィス、ショールームなど商業目的の空間を機能的かつ魅力的にデザインする専門分野です。利用者の行動や心理、ブランドイメージを考慮し、売上や顧客満足度の向上を目指します。その過程では、ミーティングでコンセプトを明確化し、設計・監修を通じて空間の完成度を高めます。さらに、家具や什器、サインデザインで空間全体を統一し、BIMデータを活用した効率的な管理・改装も可能です。柔軟性を重視した設計やテラス席の導入など、現代のニーズに応える工夫も求められます。このように商空間デザインは、機能性と創造性を兼ね備えた価値ある空間を提供するのです。