店舗を設計する際は、見た目の美しさやトレンドを重視するだけではなく、避けるべきタブーやNGにも目を向けなくてはなりません。動線や照明、カラー選びなどで失敗すると、集客や売上に悪影響を及ぼすこともあります。この記事では、空間デザインにおける代表的なNG例と、その理由についてくわしく解説します。
店舗デザインの役割と考慮すべきポイント
店舗デザインは、単なる「見た目のよさ」を追求するものではありません。お客さんが「また来たい」と思える空間づくりのために、居心地や動線、視認性など、さまざまな要素を計画的に整えることが重要です。とくに、店舗のコンセプトやターゲット層に合わせた設計は、お店の印象や売上に大きな影響を与えます。まず店舗設計において大切なのは、「妥協できる点」と「できない点」の整理です。
たとえば、入口の大きさや店内の明るさなどは、予算や立地によって制限があるかもしれません。しかし、その制限の中でもコンセプトやお客さんにとっての「居心地」を損なわない工夫が求められます。また、外観や入り口の設計も重要なポイントです。店舗の外観は「お客さんとの最初の接点」となる部分であり、第一印象を左右します。とくに新規顧客にとっては「入りやすいかどうか」が来店を決める大きな要因になります。
たとえば、入口は広くわかりやすく設計したり、外から店内の様子が見えるようにする、明るい照明を活用して安心感を与えるなどの工夫が必要です。ただし、「隠れ家風」など、あえて外から見えにくい設計をする場合もあります。そのようなケースでは、メニューや価格帯を記した看板、内装写真などを店舗前に掲示したり、Webサイトで雰囲気や世界観を伝えるとよいでしょう。
店舗デザインにおけるタブーとは
店舗デザインでタブーを犯すことは、単なるデザイン上の失敗ではなく、店舗運営に支障をきたすようなミスマッチや混乱を発生させます。
コンセプトと異なるデザイン
「和食のお店なのに、まるで洋風カフェのような内装」「喫茶店なのに、お酒を前面に押し出したレイアウト」など、店舗のジャンルと雰囲気が噛み合わないケースは、混乱を招きます。デザインは目を引くことではなく、コンセプトを体現することが本来の役割であることを忘れてはいけません。
客単価とデザイン費のバランスが不釣り合い
たとえば、客単価2,000~3,000円の居酒屋で高級感漂うシックな空間を演出してしまうと、客層と空間の間にズレが生じ、居心地の悪さにつながります。逆に、高単価のレストランでチープなデザインを採用すると、信頼感を損なう結果にもなりかねません。ターゲット顧客に合わせて空間の明るさ、レイアウト、素材選びを行うことが、成功する店舗デザインの基本です。
動線計画の失敗
居心地のよい空間は、お客さんだけではなくスタッフの動線設計にも配慮することで完成します。たとえば、カップル席のすぐ近くにスタッフが頻繁に待機していたり、厨房との導線が重なるような設計は、リラックスした雰囲気を損ねる要因になります。従業員の数や業務内容に合わせた待機スペースの確保や、動線が重ならないレイアウトを検討することで、サービスの質の向上と居心地のよさが両立できるようになります。
著作権トラブルにも注意しよう
近年、SNSやWebサイトでの発信が一般化したことで、店舗デザインに関する著作権トラブルが増加傾向にあります。おしゃれで話題性のあるデザインほど、模倣や類似が起きやすくなるため、以下の点に注意してトラブルを回避しましょう。
契約段階での著作権確認
設計図面・ロゴ・サイン・3Dパースなど、制作物の著作権の帰属先や使用範囲を事前に契約書で明示することが大切です。また、開業後にリニューアルやデザイン変更を行う可能性がある場合、その変更に関する設計者の関与範囲を事前に取り決めておくと安心です。
オリジナルデザインの証拠を残す
デザイン工程や修正記録、使用した素材の選定過程などをきちんと記録・保存しておくことで、オリジナリティの証明が可能になります。これは、万が一他者に模倣された場合の防衛策としても有効です。
他社の権利を侵害しない
流行のデザインや近隣の競合店を参考にするのはよくあることですが、そのまま模倣するのはリスクがともないます。ロゴや配色、コンセプトの打ち出し方などが類似していると、意図せず著作権や商標権を侵害してしまうケースもあります。施主との密なコミュニケーションを取り、オリジナリティを意識して進めましょう。
まとめ
店舗デザインには自由度がある反面「やってはいけないNG」が確実に存在します。店舗コンセプトとの一貫性をもたせ、入りやすさや居心地のよさ、スタッフの動線、ターゲット層への最適化など、多方面に配慮しなければなりません。「よいデザインは、見た目だけではなく計画とルールの積み重ねから生まれる」という意識をもつことが、店舗づくりにおいてますます重要になってくるでしょう。