アートと聞いて、みなさんは何をイメージするでしょうか?斬新な構図の絵画や複雑で精巧なオブジェ、あるいは、ときに社会を騒がせる、エッジの効いた前衛パフォーマンスなど、いろいろあることでしょう。今回の記事では、アートの要素を空間デザインに取り入れる魅力について解説します。アートに関心のある方はぜひ一読してみてください。
アートがもたらす空間デザインへの影響とは何?
アートの醍醐味は、単体としてだけでなく、ほかのジャンルと組み合わせることによって、相乗効果以上の融合反応を期待できることです。たとえば、空間デザインに取り入れるのもそのひとつ。空間づくりにおいて、絵画やオブジェなどのアート作品は、飾り物として、後からレイアウトされることが多いものです。玄関にお気に入りの絵を掛けているだけで何となくうれしい。そんな気持ちは、みなさんも日頃から経験していることでしょう。
しかし、単なる飾り物である限り、アートのポテンシャルを十分に発揮できているとはいい切れません。むしろ、飾り物として前面に押し出すより、あくまで日常の生活空間のなかでナチュラルに溶け込んでいるかたちが理想的です。実は、そこに、アートと空間デザインの融合の鍵があります。暮らしになじんだアートは、私たちの生活や人生そのものを輝かせ、豊かなものにしてくれる存在です。
アートを取り入れた空間デザインの具体的なアイデアと実践例
アートを空間デザインに採用するといっても、具体的にどんなケースがあるのでしょうか。アートにはさまざまな側面がありますが、まわりにある空間やモノを活かす、という視点も重要な意味をもちます。試しに思い浮かべてください。日々暮らす家の中にはいろいろなものがあるはずです。
壁をはじめ、天井、テーブル、椅子、床、照明など。実は、アート的な観点から見ていくと、どれも絶好のキャンバスといえます。たとえば、日本の伝統美術を振り返ってみれば、そのことがたやすく理解できるにちがいありません。狩野永徳の屏風絵や伊藤若冲の襖絵、葛飾北斎の天井画など、昔から日本では空間のなかにアートを取り込む文化が根づいています。
現代でも同様のことは可能でしょう。リビングの広々とした壁を素材にして、一流のアーティストに作品制作を依頼する方法もあれば、DIYのように自分でつくり上げていくのも選択肢のひとつです。身近にある空間やモノだからこそ、視覚だけでなく、肌身で感じられる要素も多く、毎日、呼吸するようにアートを体感できます。
アートを活用した魅力的な空間デザインの創造方法とポイント
前項でも少し触れましたが、アートを活用した空間デザインは、視覚だけに頼らないところもポイントです。美術館の作品の多くは、壁に掛けられたり、ケースの中に入れられたりして、近くで鑑賞できてもじかに触ったりできません。
一方、生活空間に組み込まれたアートは、まわりにある環境そのものなので、実際に触れることでワクワクするような感覚、刺激すらもつくり出せます。人が暮らしていくうえで前向きになれたり、未来に希望をもてたりすることは、いわば、アートの果たす役割のひとつです。
優れたものに接すれば、自然に毎日の表情も明るくなります。空間の中ですでに配置された既製品のよさを活かしつつ、アートの要素をふんだんに取り入れる。制約があるからこそ、自由な発想も生まれます。
まとめ
いかがだったでしょうか。日本の伝統美術をひも解いていけば、アートと空間の理想的な融合は、伝統文化として現在まで脈々と引き継がれていることがわかります。今回の記事のテーマもまた、大きな歴史の流れのなかで位置づけられるといっていいでしょう。新型コロナウィルスの影響により、個人的な空間をいかに充実させるかが注目されるようになりました。これからふだんの生活空間にアートを取り入れたいと考えるみなさんにとって、本稿がささやかなヒントになれば幸いです。