快適で過ごしやすい居心地のよい空間の構築にはコンセントが重要です。建物で過ごす人の動線や衛生面、防災面などを考慮した基本設計に力を入れるのはもちろんのこと、利用者のモチベーションが上がるようなデザインも大切でしょう。今回は、空間をデザインするうえで欠かせない「コンセプト」を決めるポイントについてご紹介します。
空間デザインのコンセプトとは
空間をデザインするときには「生産性があがる空間」「快適で過ごしやすい空間」「居心地のよい空間」などポジティブなイメージが基本になります。とはいえ、それだけでは漠然としすぎていて、空間をデザインすることは困難です。
漠然としたイメージの向かうべきゴールを定め、漠然としている解像度を上げ、より具体的なデザインに落とし込むには、何のための空間なのかを明確にしなければなりません。何を目的として、誰をターゲットとして、どのような雰囲気にしたいのか。空間の役割をはっきりさせることが、空間デザインのコンセプト設定に欠かせないのです。
空間デザインのコンセプトを決めるときのポイント
空間デザインのコンセプトを決めるには、その空間がなんのための空間かを明確にすることが効果的です。オフィスや商業施設、宿泊施設であれば、その空間の持つ役割・目的もはっきりしているでしょう。
「顧客が喜ぶサービスを生み出すこと」「顧客が過ごしやすい快適な空間を作り出すこと」といった目的に、企業ごとの理念や姿勢といった個性を加えることで、コンセプトがより鮮明化し、空間の演出方法も定まってきます。たとえば、都心から離れたロケーションにある高価格の宿泊施設であれば「あまり休みの取れない激務の中間管理職層が、年に数度の休みを使って、都心から離れたのどかな自然豊かな土地で、家族そろって贅沢にゆっくり過ごせる和の癒し空間」といった具体的なストーリー性をもたせると、コンセプトイメージが広がるでしょう。
また、空間デザインのコンセプトを決める際には、複数のキーワードを含めることで、コンセプトが厚みを増し、かつ柔靭なものに発展できます。とはいえ「安くて親しみやすい」と「高級で特別感が強い」など、キーワード同士の意味合いに対極をなすものが含まれると、矛盾が生まれてしまうことも。コンセプトと反発しない、ストーリーを補強するようなキーワードをちりばめることで、コンセプトのさらなる強化が望めます。
コンセプトに合った空間デザインを実現する要素
コンセプトを強化するためのキーワードを見つけるためには、別の視点からコンセプトを見ることが有効です。たとえば、オフィス空間を設計する場合であれば、スタッフの視線だけでなく、その企業が提供するサービスを必要とする顧客の視線や競合他社の視線を取り入れます。企業に対する顧客のニーズが「エンターテインメント性」であるときと「信頼のおける堅実性」であるときに、求める個性は異なるはずです。
前者であれば柔らかさ・楽しさ・刺激・明るさといった要素、後者であれば確実さ、誠実さ、透明性といった要素。また、競合他社と比較したときにどんな強みを持っているのか、ほかには負けないこだわり、といった要素をキーワードとして盛り込むことも有効です。
これらの要素がオフィス空間を構成することで、企業の個性を見える化できます。壁紙や床、天井の色、オフィス家具のデザイン、素材、照明、BGMやインテリアなどを厳選することで、企業のブランディングを補助する効果が得られるでしょう。
まとめ
今回は、空間デザインにとって重要なコンセプトについてご紹介しました。コンセプトを決めるポイントとして、その空間の役割を明確にすることが大切です。何を目的として、誰をターゲットとして、どのような雰囲気にしたいのかを明らかにすることで、空間デザインの方向性が定まります。コンセプトを強化したい場合には、空間の持つ役割をストーリー化し、そのストーリーを強化するキーワードを設定したり、スタッフの理念や空間に込めた思いなどをデザインに組み込んだりすることで、空間デザインに「個性」が生まれ、ブランディング効果も得られるでしょう。