空間デザインを学んだ学生が卒業後目指す職業は、インテリアデザイナーや環境デザイナーが主流です。インテリアデザイナーではインテリアのみならず店頭のディスプレイや、レストランやホテル内のイベントごとの装飾などの仕事もあります。環境デザイナーなら景観法に基づいた歴史的な街並みの保護や、国立公園の自然保護なども仕事のうちです。
空間デザインの知識をインテリアデザイナーとして活かす
空間デザインの知識を一番活かせるのはインテリアデザインで、学校などでデザインを学んだ学生の一番主流な就職先ともいえます。空間を広く見せたい時は明度を明るくすると効果的、印象を重厚にしたい時は明度を低くするといった、色彩調節と呼ばれるカラーコンディショニングなどの知識が身に付くからです。
オフィスインテリアではコーポレートアイデンティティを形成するために、コーポレートアイデンティティカラーをロビーなどにアクセントとして施したりします。オフィスのフォーマルゾーンでは寒色の色彩で明るくメリハリのあるデザインにし、インフォーマルゾーンでは暖色系や中性色の色彩で穏やかな空間にするといった仕事内容です。
学校などの教育機関では勉強に集中できる配色と空間にし、食堂では学生が交流しやすいようにカジュアルな配色で動きやすくデザインします。小学校と大学では求められる動線が違うため、世代ごとに合わせた個性を活かす空間を提案することも大切です。
空間デザインの知識を環境デザイナーとして活かす
環境デザイナーとは国が定めた景観法や地方自治体が定めた条例の類に従って、ランドマークや街の景色をデザインする職業です。アメリカの色彩調節をお手本にした環境色彩という概念から、工場などの産業施設の安全や生産性を向上させることから始まり、京都市などの歴史的風土を保全するための古都保存法など良好な空間をデザインします。
眺めを得る際の視点が存在する主対象から見て限られた視点、つまり眺めを把握するための基本となるシーン景観や、展望台など視界の広いパノラマ景観が眺めのよい空間であるように、都市計画する大切な仕事です。
視点が移動して見える景観のシークエンス景観においても住民に不快感を与える騒色と呼ばれる色の公害や、歩行しにくい空間を善処解決していきます。外装や素材が確認できる近景から建物による全体が確認できる中景、ランドマークや周辺建物と一緒に空間を背景として眺める遠景まで、景観全体のバランスを整えるのが環境デザイナーです。
空間デザインの知識を福祉に活かす
空間デザインを、バリアフリーに活かすこともできます。病院ではスタッフの働きやすさを重視し、患者の療養室にはどんな患者からも好まれる配色にする、心理的な癒しの効果が期待できる部屋にデザインするといった知識があるからです。
高齢者の患者に配慮して安全性や識別性の高い色彩とバリアフリー設計にし、杖が必要な人の歩行を助け、車いすの人と介護者が余裕を持って行動しやすいように空間をデザインします。駅などの公共施設で視力や聴力に悩みをかかえる人のために、動きやすく駅のスタッフに気軽に助けを求められる空間にするのも大切な仕事です。
東京都では高齢者などの移動が円滑にできるよう、バリアフリー法に従って高齢者が利用しやすい空間の整備に関する条例も制定しており、すべての人が行動に制御のない空間を目指してデザインしなければなりません。そのために部屋を立体で考えるデザインの知識が必要であり、福祉という分野で空間デザイナーは大切な役割を担います。
東京都都市整備局では東京都景観計画や、改正東京都景観条例及び同条例施行規則により街並み景観が決められています。少子高齢化によりバリアフリーをはじめとした、福祉面での空間デザインの需要は年々増加中です。インテリアでも景観でも福祉でも空間デザインの重要性は高まっており、今後あらゆる面で必要性の高い職業となっていくといわれています。